光のもとでⅠ
「でも、嬉しかったです」
『良かったね。でも、そろそろそこにいるメンバーに教えてやってくれる?』
「え……?」
『あと二分十八秒で六限が始まるって』
 にこりと笑った王子の一言で行動へ移した人は約二名。
 桃華さんと佐野くんだ。
 画面に向かって、「そういうことは早く言えよっ」と噛み付いたのは加納先輩と春日先輩。
 直後、みんな来たときと同じように全力疾走で帰っていった……と思う。
「……台風一過?」
 そう口にすると、背後で湊先生がくつくつと笑っていた。
 美都先輩との通話も切り、あと少しで点滴も終わる。
 あと二十分くらいかな……。
「横になる?」
「いいえ。少しずつ慣らしたいから、だから起きています。……と言っても床なんですけど」
「あんたの体力、バロメーター的にどのくらい残ってる? 少なく見積もってよ?」
 いったいどんな話しだろう。というよりは、何を前提での話しだろうか。
「そうですね、円グラフで三十パーセント残ってるくらいでしょうか?」
「その三十パーセント、全部若槻に使ってやって」
 そう真顔で言われて思い出す。
 そうだ、唯兄のことがあったのだ……。
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