光のもとでⅠ
 穏やかに見えたのは間違いじゃなくて、御園生はとても落ち着いていた。
 ただ、やっぱり面食らったのは俺と同じで、談笑しながら学園私道を下る。
 下り切ったところで、
「心配してくれてありがとう。でも、大丈夫だから……だから、公道に出たらバイバイしよう?」
 今は内面の心配はしていない。でも、その提案を呑めない理由があった。
「この辺、駅前と比べれば治安はいいと思う。でも、それってさ、人気が少ないってことでもある。何かあって声をあげても人がいないことのほうが多い。そういうのもちゃんとわかってたほうがいいよ」
「……ありがとう」
「そう、それでよし……なんてね。実のところ、数学教えてほしいところあるんだわ」
「そうだったの?」
「うん」
「でも、それなら学校で教えたのに」
「まぁ、いいじゃん。部活終わってちょっと一息つきたいってのもあるし、マンションの喫茶ルームで何か飲もうかなと思ってさ。明日は学校も部活も休みだし」
「あ、そうだね」
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