光のもとでⅠ
 私は――。
 こんなことを言ったら怒られてしまうかもしれない。でも、唯兄の支えになれるなら、体力数値がマイナスになってもがんばれる。
 唯兄の支えになりたい……。
 そのための努力なら惜しまない――。

 点滴が終わり針を抜くとき、今までに感じたことのない緊張を感じた。
「翠葉が無理をする必要はないけど、がんばってほしいとは思う」
 そう、湊先生に言われたからだ。
「先生?」
「ん?」
 窓際に立つ先生は逆光のため顔の表情が見えづらい。
 けれど、こんなことを言ってどう思われるのか――。
 それが気になって、先生の表情を見逃さないように見つめていた。
「私、必要とされる人になれますか?」
「……それはあんたしだいね」
「……私、しだい――」
 それはとても単純明快な答えで、湊先生の表情は何ひとつ変わらなかった。
「自分の可能性を信じることができる人間は、たいていのことをクリアするわ」
 そう答えたあと、ふ、と笑い、
「ま、時に挫折って負のループにも陥ることもあるけどね」
 と、力強く伸びをし、体を反らせたまま窓の外――空を見上げた。
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