光のもとでⅠ
　すぐに上へ上がるのかと思いきや、御園生はカフェラウンジで勉強を見ると言いだした。
　もともとそこで教えてもらうつもりだったけど、真っ直ぐ帰らない時点で「家」に問題がある気がした。
　行けばわかるものなんだろうか……。
　そんなことを考えながら数学を見てもらったけど、御園生の教え方は相変わらず丁寧で、順を追って教えてくれるからあとで見直すときにもとても有効。
　六時を回ると御園生の携帯が鳴り始めた。
「……一階のカフェラウンジ。――佐野くんに数学を教えていたの」
　一言話すたびに御園生の表情は歪んでいく。とても言いづらそうに、後ろめたそうに……。
　どうしてなのかはわからないけど、今から行く場所に「何か」があるのだと確信した。
　携帯の通話を切っても張り詰めた空気は解除されることなく、こちらにまでひしひしと伝わってくる。
　そして、ただでさえ血色の悪い顔色に拍車がかかった。
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