光のもとでⅠ
「無理、してないから」
 御園生はそう言ってすぐに教材を取りに行くとリビングをあとにした。
 なんだろ、この違和感……。
 藤宮先輩の物言いはいつものことだ。それに返す御園生の反応だって別段おかしかったわけじゃない。なのに、ちぐはぐに見えて少し気持ち悪かった。
 勉強が始まると御園生と海斗は藤宮先輩の仕切りで問題を解き始める。そして時間がくれば答え合わせ。
 普通の試験と同様の問題数なのに、制限時間三十分以内で解くっていう荒業を見せ付けられた。
 俺は途中途中、わからないものを御園生に訊く感じだったけど、俺の呼びかけに気づく御園生を海斗が不思議そうな目で見ていた。
 前に聞いたことがある。何かに集中しているときは話しかけても気づかないって。
 それからすると、今は全く集中できていないということなんだろうか……。
 余計なことを考えているうちに十一時を迎え、勉強会はお開きになった。
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