光のもとでⅠ
「悩みそのものを訊くことはしなかったけど……でも、きつく当たっちゃったわ」
「えっ!? 言いだしっぺの桃華がっ!?」
 立花の言葉に決まり悪そうに顔を逸らす。すると、海斗が「まぁまぁ」と立花をなだめ、
「で? 何を言っちゃったわけ?」
 と簾条をうながした。
「……少しだけよ。だってあの子何度も謝るから……だからつい……」
 どうやら教室から昇降口に行く間に一悶着あったらしい。
 でも、気持ちはわかる……。御園生に「ごめんなさい」って言われると、本当にキツイ。ほかの誰に言われるよりも堪える。
 簾条が言ってしまった言葉と同様のことを俺も感じていた。
 御園生の「ごめんなさい」は、時として「これ以上踏み込んでこないで」って聞こえるんだ。本人が無意識であればあるほどに、超えがたい一線に思えるわけで――。
 しかし、これは……俺、セーフどころか完全にアウトだろ。
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