光のもとでⅠ
 最近はあまり眠れていなかった。彼女のことが気になって……。
 会いたいとは思う。でも、会いに行ったら無理して彼女を笑わせることになりそうで。彼女が心から笑ってくれるなら嬉しいけれど、心に反して笑われるのは苦しい。
 俺は彼女の笑顔を守りたいのであって、作り笑いをさせたいわけじゃない。
 こんなことを考えだすと止まらない。終りが見えない思考に脳が占拠される。
 結果、俺は仕事に逃げる。頭を仕事でいっぱいにして、彼女のことを何も考えられないように――。


 * * *


 夜通し仕事をしていれば、朝にはなんとなく眠気を感じる。しかし、深い眠りにつけるとは思えない。
 キッチンへ行き、ラベンダーティーとミントティーを目の前に悩む。
「すっきりしたいならミント。休むならばラベンダー……」
 ぼーっとそれらを見ていると、インターホンが鳴った。
 こんな朝早くに誰?
 知人以外は尋ねてこないドアを開く。と、唯が立っていた。
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