光のもとでⅠ
 そんなこともわかんねーのか、というのはひとまず置いておく。どうしてそう思えたかというのなら、さっきの涼先生の言葉が頭に残っていたから。
 十七ってどんな年だ? と少し考えた。
 人がストレス発散の方法を心得るのは、きっと義務教育を終えたあとくらい。……というのは、学校っていう場所では勉強のほかに運動も強制的にさせるからだ。
 人間、動いて発散するという方法を一番に身につける。何かに打ち込むということを知って、初めてそれがストレス発散のひとつになり得ると知る。
 けれどスイハの場合、運動というひとつをとってみれば、それは体調不良を引き起こす引き金になりこそすれ、ストレス発散にはなり得ない。
「スイハの趣味はなんだ?」
「……ピアノ、ハープ、石鹸作り、森林浴、お散歩、読書――」
 割と多くのものを持っているようだった。しかし、散歩はともかく、森林浴って趣味なのか? いや、深いことは考えないようにしよう。
「それを最近やってるか? 最後にやったのはいつだ?」
「え……?」
「ピアノを最後に弾いたのはいつだ?」
 スイハは視線を中に彷徨わせ固まった。
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