光のもとでⅠ
 唯兄とはどうして普通に接することができたのだろう。
 あの場に蒼兄と秋斗さんが一緒にいたから?
 それとも――前にお姉さんと話したことがあったから……?
「じゃ、あとでね」
「えっ?」
「……やっぱ聞いてなかったか」
 慌てて謝る。
「そんな必死に謝ることじゃないよ。俺、無事にデータ送信できてるか確認してからゲストルームに行くからって言っただけ」
 そう言われてひとりで九階に降りた。

 ゲストルームのドアを開けると、
「おかえりなさい」
 と、栞さんが笑顔で迎え入れてくれた。
 挨拶を済ませ、洗面所で手洗いうがいをして廊下に出ると、
「どういう経緯があるのかわからないけど、あのオルゴール、翠葉ちゃんが持っていたのね」
 と、栞さんは少し困ったように笑った。
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