光のもとでⅠ
「診察、終わったんですか?」
『あぁ、今終わったところだ。そのうち連絡あるだろ』
「……なんで自分に電話なんでしょう? 何か、ありましたか?」
 兄の心境としては、病院でも何かあったというのだけは勘弁してほしい。これ以上、翠葉の負担になりそうなことは起きてほしくない。
『何かってほどのことじゃない。ただ、あいつを外に連れ出してやれ』
「え?」
『スイハ、ストレス発散方法を知らないだろ? なんでも真面目にひとつひとつと向き合う性格なのはあいつのいいところでもある。が、息抜きは大切だ。自分でコントロールできないなら、今は人の手を借りるほうがいい。もう冬休みだ。幸倉に帰るなら散歩にでも連れ出してやればいい。それだけのこった』
「……わかりました。ありがとうございます」
『じゃぁな』
 通話を切ると、すぐに翠葉から連絡が入った。
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