光のもとでⅠ
 一言前とは大違いの、張り詰めた声で言われた。
 翠葉の心をいたわるように声をかけると、
「自分のせいで人の予定や何かを狂わせるのも嫌……。あと、ここに留まったままなのもいや」
 フラストレーション――ストレスよりも、その言葉ほうがしっくりくる気がした。
 現状に満足しているわけではなく、どうにかしたいのにどうにもできない。自分に不満があり、不快な緊張をこれでもかというほどに強いられる。
 どうしたらそこから抜け出せるのかがわからない――。
 テニスや陸上をやっていたとき、俺も何度となくそんな状況に陥った。あのときはスランプって言葉を使ったっけ……。
 ふと、相馬先生に言われたことを思い出す。

 ――「散歩にでも連れ出してやれ」

 ……仕方ない。この際、時間帯や寒さには目を瞑ろう。翠葉がしたいようにさせてみよう。
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