光のもとでⅠ
「翠葉ちゃん、早く行かないと朝食に遅れるよ?」
「慣れないってヒールの高さ? 必要ならどうぞ」
 俺と司は示し合わせたように、彼女の前へ手を出した。
 彼女はふたつの手を見て困惑する。そんなことは想定済み。そして、どちらの手も取らないであろうことも想定内。
 でさも、そこで引く人間たちでもないってこと、そろそろ気づこうか?
 翠葉ちゃんからピリピリとした空気が伝わってきたから、少し場を和ませることにした。
「司、俺たち『付き合ってください』って手ぇ出して、思い切り断られてる状況に見えない?」
「あぁ……。でも、話の内容は全然違うから」
「だから光景が似てるって話し」
「……錯覚起こして疑似体験してる気分になるからその手の発言禁止」
「了解」
 司にことごとくあしらわれるのは日常茶飯事。翠葉ちゃんもそろそろ慣れてみない?
 穏やかな気持ちで彼女を見つめていると、司がザックリ切り込んだ。
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