光のもとでⅠ
 素直だな……。
「確かに。涼さんに却下されたものは俺と司ふたり揃っても覆せないから気にしないで? さ、早く行こう」
 再度、俺たちは手を差し伸べた。けれど、
「ひとりで歩けるのでっ……大丈夫、です」
 彼女は真一文字に口を引き結んだ。
「ま、無理強いするものでもないしね。とりあえずレストランへ向かおうか」
 俺の言葉を合図に、司と同時に手を引っ込める。そして、一歩踏み出そうとした次の瞬間、彼女の体が不安定に揺れ、条件反射で手が出た。
 自分の動体視力と反射神経に感謝。
 この腕がなかったら彼女は絨毯の上に転がっていたことだろう。それで大きなケガをすることはないにしても、打ち身のひとつやふたつは免れなかったはずだ。
「やっぱりガイドはあったほうが良さそうだけど?」
「す、みません……」
「いいえ。ただ、この手は解放してあげられないけどね? 俺で良ければ歩くコツを教えるよ?」
 にこりと笑って営業トーク。
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