光のもとでⅠ
 共同戦線を張ったとはいえ、秋兄に翠を譲る必要はなかった気もする。でも、自分が翠に歩き方を教えられるとは思えなかった。
 重心のバランスを考えるのは簡単だ。けど、歩くにあたっての注意事項までは知らない。
 ……翠がバランスを崩したとき、秋兄に遅れをとった。
 勝敗を分けるとしたらそこ。だから、行きを譲った。それだけ。
 朝食後は自分がその手を取れる。
 慣れない靴を履いていきてくれてありがとう、と思わなくもない。履き慣れた靴ならこんなことで手を取ることはなかったと思うから。
 ――否。秋兄なら、男は女の子をエスコートするものだ、とか適当な理由をつけて何がなんでもあの手を取るかな……。
 視界の端に動くものを捕らえた。
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