光のもとでⅠ
 ウェイターではない。翠と秋兄だ。
 翠はレストランを見渡し、秋兄が立つ反対側にある静さんたちのテーブルをじっと見ていた。
 たぶん、どのテーブルにも置いてあるケーキスタンドを見ているのだろう。
 注意がおろそかになった翠を難なくエスコートして歩く秋兄に少し嫉妬する。
 自分なら、声をかけてしまうに違いない。危ないからこちらに意識を戻せ、と。もしくは、手を強く引いてしまいそうだ。
 秋兄は、そのどちらをすることもなく、翠を目的地まで完璧にエスコートした。
 悔しい――。
 どうやっても抗えない経験値の差。
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