光のもとでⅠ
 翠がサロンに移動するタイミングを見計らって席を立った。
 後ろから近づくと、俺に気づいた碧さんがにこりと笑う。
「翠葉は司くんに送ってもらいなさい」
「え?」
 振り向いた翠は口を開けて驚いた。
「司くん、翠葉をお願いできるかしら?」
「はい」
 翠は席を立ったものの、なかなか俺の手を取ろうとはしない。
「早く行ったほうがいいぞ」
 同席していた昇さんの言葉に苦笑を返す始末だ。
「秋兄の手は借りたのに俺の手は借りられないとか言うつもり?」
 笑みを添えて尋ねると、ようやく手を重ねてもらうことができた。とても遠慮気味に、ちょこんと……。
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