光のもとでⅠ
 重なる手があまりにも遠慮の雰囲気を漂わせるから、エスコートになっているのかが非常に怪しい。
 ちら、と半身後ろ見ると、ヒールの分だけ縦に伸びた翠はいつもに増して華奢に見えた。
 折れるんじゃないかとか、倒れるんじゃないかとか、とにかく手を差し伸べて支えたくなるほどに。
 ふとした拍子に手が離れそうになって、思わず引き止めるように手を握った。
「翠」
 一度の呼びかけでは反応せず、再度呼ぶと、
「え? あ、何っ!?」
 バッ、と顔を上げてすぐに俯いた。
 俺、ここまで避けられるようなことをした覚えはないんだけど……。
 思いつつ、歩き方の話を振る。
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