光のもとでⅠ
「……ひとつ訊きたいんだけど」
「な、に……?」
「今、何に一番困ってる? ……今、何に困ってるのか知りたいんだけど」
 訊いてどうする? 自分に対して困ってると言われたら、俺はどうするつもりなんだろう。
「え? あの……何にって――」
 てんぱってるのか、呼吸がさらに荒くなった。
「翠、深呼吸」
「あ、うん。深呼吸――え? 深呼吸?」
 俺が口にした言葉以前、自分の言葉すら理解していない。なんでそんなぱにくってるんだか……。
「少し落ち着いてくれないか? 息上がってるから、まずは呼吸整えて。答えるのはそれからでいいから」
「あ、はい」
 翠は律儀に五回ほど深呼吸を繰り返した。
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