光のもとでⅠ
 もし、自分になんの問題もないと思っているなら、どれだけめでたい思考回路なのかと罵りたい。
 そのくらい、俺だって動揺しているのに、翠は全部俺が悪いように言う。
 そのくせ、翠の前を歩けばどうしてか必死な様子で話しかけてくる。
 こいつ……どうしたいんだか。俺をどうしたいんだか……。
 そんなことを考えているうちにサロンに着いた。
「あ、りがと。送ってくれて」
「別に何もしてないけど」
 現にエスコートさせてもらえたのはレストランから回廊までのほんの十メートルくらいなもの。
「行ったら? あとがつかえる」
 そう言って、翠をサロンの中へ追いやった。
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