光のもとでⅠ
「おいっ、司っ!?」
 海斗が引き止めるように声を発し腕を伸ばしてきた。それを振り払い、翠の背後に立つ。
 翠の膝に落としたのは俺が使っていた手袋。そして、髪を左側でまとめて寒そうな首元にマフラーを巻いてやる。
 こちらを向こうともしない翠の表情はわからない。それに、頬にかかるほどにマフラーを巻いたのも一要因。
 文句のひとつくらいは言っても許されるだろうか。
「外に出るのにどうして手袋もマフラーもしてないんだ」
 反応はないかと思ったら、やはりこっちは見ずに「ごめんなさい」と小さく謝られた。
 肩が震えたように見えたけど、寒さに震えたのか、俺の言葉に萎縮したのかは不明。
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