光のもとでⅠ
 海斗の前で言えることではなかったのだろう。海斗以外の人間に言うなんて、翠葉にはできない。「仲間はずれ」を意識して。
「翠葉、胃の調子もずっと良くなくて、パレスに行く前には貧血の状態も進んでいたらしい。体調がよくないところに色んなことが重なりすぎた。――翠葉、会ってたんだ。藤宮の会長に。湊先生の挙式で知って、すごく動揺してた。その翌日、二十五日は会長のバースデーパーティーで、翠葉は会長に呼び出されてレストランにいた」
 レストランは会長の意向で防犯カメラの一切が作動しておらず、そこで会長が持病の喘息発作を起こした。
 運悪く、会長も翠葉も携帯をもちあわせてはいなかった。翠葉は人に知らせるために走るしかなかった――。
 すぐにパレスで応急処置のみが行われ、ヘリで病院へ搬送されたこと。そして手術に必要な検査を最短で済ませ、今日その手術が行われたこと。
 手術は弁膜形成手術に留まらず、胃潰瘍の処置も行われたとのことだった。
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