光のもとでⅠ
「この役はさ、翠葉ちゃんの学力を保てさえすれば俺でも司でもかまわないんだ。だから、翠葉ちゃんが選んでね。都度、連絡をもらったほうが教えに来るから」
 ごめんね。こんなやり方しかできなくて。
 今にも震えだしそうな手に自分の手を重ね、畳み掛けるように彼女が取るであろう選択を口にした。
「翠葉ちゃんは優しいから、どちらかを選ぶことはしないよね。きっと、俺と司を交互に呼ぶんだろうね」
 彼女は何も言わない。いや、言えない、かな。俺はそれもわかっていて、
「それでいいんだよ」
 救いにもならない言葉を残して病室を立ち去った。
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