光のもとでⅠ
「だから先に断りに来たんだ?」
 零樹さんに言われ、再度頭を下げた。
 外出申請は医師が許可しない限りは受理されない。そして、患者が未成年の場合には保護者の同意が必要となる。まず、翠がぶち当たる壁はここのはず……。
「司くん、教えてくれてありがとうね」
 その言葉に驚いて顔を上げる。と、穏やかな表情で零樹さんが俺を見ていた。隣に座る碧さんも似たような表情だ。なんで……。
「もし、何も知らずに翠葉から外出許可を求められていたら却下するところだった。でも、そういう事情があるなら条件つきで許可しようと思う」
「条件……ですか?」
「もちろん。送迎は蒼樹たちにさせるし、秋斗くんと話したら真っ直ぐ帰ってくること。途中で具合が悪くなったら強制送還。そのくらいは釘刺しておかないと。うちの子、がんばり屋さんもとい、無理したがり屋さんだからさ」
 内容にそぐわない平和すぎる返答に眩暈がしそうだ。
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