光のもとでⅠ
『あり、がと……』
「なんで、泣いてるの? ゆっくりでいいから、話して」
『……全部、私のせいで――ツカサも秋斗さんも離れていっちゃうっ……』
 何がどうして……。あのふたりが御園生から離れるなんてあり得ないだろ?
 いや――あり得るのかな。
 電話の向こうで泣いている御園生は崖っぷちに立たされているみたいに泣いていた。
 とても苦しそうに、とても悲痛に。
「御園生、ちゃんと聞くから。少し落ち着こう」
 言葉で落ち着こうと言っても無理。でも、今俺たちの媒介になっているのは携帯電話ってツールだから、言葉にする以外の手段がない。
 こんなときに痛感するのは、語彙の少なさ。全然足りない。あとどのくらい本を読んだら培えるんだろう。あと、どのくらい引き出しを作ったら「安全地帯」を提示できるのかな。
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