光のもとでⅠ
 有無を言わさずの状態は、司先輩とのやりとりにおいてあまり珍しいことではない。
 そのほとんどにおいて、理に適ったことが多いのだけれども、私が悔しいと思うか思わないかは別の問題で……
 リビングのラグに座ると、左のソファには海斗くんが寝ていて、右のソファには栞さんが横になっていた。
「栞さん、大丈夫? お腹痛い……?」
「んー……ちょっと気持ち悪くてね」
「ご飯食べられそう? 一緒におうどん食べる?」
「……今日はちょっと遠慮しようかな」
 珍しいと思った。
 栞さんは三食きっちりと食べる人だから。
 そのくらい具合が悪いのだろう。
「ここじゃなくておうちの方がゆっくり休めますよね」
「そうね、今日は帰らせてもらおうかな」
「少し待っててください。蒼兄呼んできます」
 すぐに立ち上がろうとしてやめた。
 ここで私が眩暈を起こしている場合じゃない。
 逸る気持ちを抑え、ゆっくり立ち上がって蒼兄の部屋へ行った。
 ノックしてからドアを開けると、恐ろしいほどの資料と本が積み重ねられていた。
「どうした?」
「あのね、栞さん具合悪くて……。ご飯食べずに帰って休みたいって言うんだけど、ひとりでは歩けないの」
「わかった」
 と、すぐに立ち上がり、床に散らばっているものを器用に避けて出てきた。
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