光のもとでⅠ
リビングへ戻ると、
「栞さん、家まで送ります」
栞さんの手を取ると、蒼兄の表情が固まった。
「手、かなり冷たいですけど……」
「貧血かな……。今回、生理痛がちょっと重くて」
と、少し恥かしそうに笑った。
「とりあえず、こんなときくらいはおとなしく抱っこされてくださいね」
蒼兄は栞さんを横抱きにして立ち上がった。
「翠、少しだけ鍋見てて」
司先輩がキッチンから出てきて、そのまま栞さんたちと一緒に玄関を出ていった。
私は言われたとおり、キッチンでカレーのお鍋が焦げ付かないようにかき混ぜる。
「彼、とても十七歳とは思えないよね?」
「はい。同い年だけど先輩で、でもそうじゃなくてもすごく頼りになる人だと思います」
「……リィは彼が好き?」
「はい。意地悪だけど優しいし、とても頼りになるから。一緒にいて緊張しない人っていうのかな……? 最初はすごく怖くて、隣にも並べなかったのに。おかしいですよね?」
クスクスと笑うと、唯兄もにこりと笑った。
唯兄とそんな会話をしながらキッチンに立っていると、このあとに起こることなんて何も考えずにいられた。
それはただ、私が考えたくないだけだったのかな……。
でも、ふたり並んで料理をするのなんて初めてのことなのに、まるで日常のことのように思えたの。
本当に、なんの違和感も覚えない穏やかな時間に思えたの。
唯兄は……唯兄はこのとき何を思っていたのかな。
「栞さん、家まで送ります」
栞さんの手を取ると、蒼兄の表情が固まった。
「手、かなり冷たいですけど……」
「貧血かな……。今回、生理痛がちょっと重くて」
と、少し恥かしそうに笑った。
「とりあえず、こんなときくらいはおとなしく抱っこされてくださいね」
蒼兄は栞さんを横抱きにして立ち上がった。
「翠、少しだけ鍋見てて」
司先輩がキッチンから出てきて、そのまま栞さんたちと一緒に玄関を出ていった。
私は言われたとおり、キッチンでカレーのお鍋が焦げ付かないようにかき混ぜる。
「彼、とても十七歳とは思えないよね?」
「はい。同い年だけど先輩で、でもそうじゃなくてもすごく頼りになる人だと思います」
「……リィは彼が好き?」
「はい。意地悪だけど優しいし、とても頼りになるから。一緒にいて緊張しない人っていうのかな……? 最初はすごく怖くて、隣にも並べなかったのに。おかしいですよね?」
クスクスと笑うと、唯兄もにこりと笑った。
唯兄とそんな会話をしながらキッチンに立っていると、このあとに起こることなんて何も考えずにいられた。
それはただ、私が考えたくないだけだったのかな……。
でも、ふたり並んで料理をするのなんて初めてのことなのに、まるで日常のことのように思えたの。
本当に、なんの違和感も覚えない穏やかな時間に思えたの。
唯兄は……唯兄はこのとき何を思っていたのかな。