光のもとでⅠ
 甘いものは苦手だけど、唯や翠葉が作ってくれたものなら食べられる。
 すると唯が、
「神経ピリピリしてるときはその場しのぎでも甘いもん食えばいーんです」
 と言い切った。
 九時近くなると緊張のピークを迎える。
 翠葉の就寝時間が十時ということもあり、電話がかかってくるとしたら、今くらいのタイミングだと予想するからだ。
 いてもたってもいられないといった感じで、父さんは次に建てる家の模型を作り始めるし、母さんは朝食の下ごしらえを始める。
 俺は何を始めるということはなかったけど、じっと自分の携帯を見つめていた。
「あーあー……もう見てらんないね」
 言ったのは唯。その直後、唯の携帯が鳴り出した。
「ビンゴ……」
 言って、唯はすぐ通話に応じた。
< 9,682 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop