光のもとでⅠ
 スイハは真正面から言葉を受け止め、真正面から言葉を返す。
 なんだ、強ぇじゃん……。
 姫さんは後姿しか見えないが、すごい剣幕で怒ってるのは想像に易い。
 っつか、ここ病院。声でかすぎんだろおまえら……。
「このままっ、会わないまま秋斗さんが海外に行っちゃったら、私、もっともっと状態がひどくなるっ。だから、未然に防ぐために行かせて欲しいっ」
 スイハの息が切れ始め胸を押さえる。と、姫さんはすぐに点滴の用意を始めた。そして、
「今のあんたに話をさせるのは得策じゃない。二十分待ちなさい。少しは楽になるはずだから。それまで私はあっちにいる。相馬、悪いんだけど翠葉についてて」
 言うと、姫さんはソファセットがある部屋へと移動した。
 ついてろ、と言われて……俺は本当にそれしかできないんだがな。
 手近にあった椅子を引き寄せ、行儀悪く背もたれに向かってまたぐ形で腰掛ける。
 手持ちぶたさでスイハの細い手首を取った。
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