光のもとでⅠ
 桜並木の左側からは朝練をしている声が聞こえてくる。そちらを見ながら、
「蒼兄……学校って楽しいのね?」
 言って、桜の木を見上げた。桜の幹からは湯気が出ていた。けれど、翠葉が見ているのは枝の先。
「どうした?」
「……葉っぱも何もないけれど、これから少しずつ新芽が出てきて、それが伸びて膨らんで、そうして花が開くんだなって……少し、想像しただけ」
「想像……?」
「うん……。私はそれを見ることができるんだなって。写真の中の桜じゃなくて、ここの桜を毎日見ることができるんだなって……。もしかしたら来年も同じ桜を見ることができるのかもしれないと思うと感慨深くて……」
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