光のもとでⅠ
「翠も。人の口にしたものを口にするな。風邪はそういうところからも感染する」
 そっか……。でも、海斗くんが風邪をひいているようには見えないから、あまり問題なかったと思うんだけどな……。
 そんなことを思っていると、私の右側に座っていた唯兄が、ソファにコロンと転がって笑いだした。
「あんちゃんも過保護だけど、司くんも過保護だよね」
 言いながらお腹を抱えて笑っている。
「司先輩はお医者さんを目指してるんだよ。だから、普段からとても難しそうな医学書を読んでるの」
「あぁ、司くんところはもろに医療系だもんね」
 言いながら唯兄は身体を起こす。
「このカレーも手抜きって言いながら、確かに手抜きだけど美味しいし」
 左隣の先輩のプレートを見ると、グリーンピースに角切りのにんじん、それからコーンと大豆……。あとはなんだろう?
「ミックスベジタブルと大豆の水煮。それからシーチキンを炒めて水入れてカレーのルーを入れるだけ。隠し味にバターとすりおろしにんにく。以上」
 なるほど……。
「え? 私、何も言いませんでしたよね?」
「目が言ってた」
 そっか……。ん? いやいやいやいや――。
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