光のもとでⅠ
「先輩、あまり私の思考を読まないでください。時々ものすごくびっくりします」
「それなら、人にわからないように仮面でもつければ?」
 それもどうかと思う……。
 こんなふうに、夕飯の時間はゆっくりと過ぎていった。
 最後のおうどんをお箸で掴むと、玄関で音がした。
「蒼兄っ!?」
 すぐに立ち上がろうとした私を阻む手があった。
 その手は左側から伸びている。
「……すみません、ごめんなさい……」
「わかればいい」
 こんなやり取りは司先輩といるとよくあることで、それはつまり、それだけ私が不注意な行動を取っているということでもあった。
 反省……。
「翠葉、ただいま。手洗いうがいしたらそっちに行くから」
 と、廊下から声をかけられる。
 それには頷いたものの、体が廊下を向いてしまう。
 左隣の先輩は立ち上がってキッチンへと入っていった。
 あ、そうか……。蒼兄のご飯……。
「彼のあれはもう条件反射みたいだよね?」
 唯兄を振り返ると肩を震わせて笑っていた。
 なんだか今日は唯兄に笑われてばかりだ。
< 974 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop