光のもとでⅠ
 五月の席替えで蒼樹を真ん中に席が前後になった俺と環は自然と三人でつるむようになったわけだけど、何を隠そう蒼樹は学年主席で入学してきた稀有な人間。入学式の答辞で知らない名前を耳にするとは思ってもみなかった。絶対に環だと思っていたから。
 環は中等部から成績首位を誰にも譲ったことがない。だから、環の名前が呼ばれることを信じて疑わなかったし、まさか外部生が成績トップになるとは思いもしなかった。
 最初は環がどう出るか少し心配していた。もともと素行に問題のあるタイプじゃないけど、環にだってプライドはあるだろうし、まさか答辞のお役目を掻っ攫われるとは思っていなかっただろうから。
 新入生代表プラス、秋斗先輩直々に生徒会役員に推薦された。このふたつが揃えば蒼樹が時の人になるのは安易に予想ができたけど、当の本人はそんなことを全く鼻にかけるタイプではなく、むしろ「気づいてないのか!?」と突っ込みたくなるくらいの無関心ぷり。
 そのせいか、中等部持ち上がりが多いクラスや部活にもあっという間に馴染んでしまった。決して自分のペースは崩さないくせに、順応力は高いときたもんだ。
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