光のもとでⅠ
「テニスってさ、狭いコートの中をひたすら走り回るんだよ。動体視力と瞬発力がないと速い球に追いつけないんだ。追いつけたところで、きちんとしたフォームで打ち返す余裕がなければ狙ったところに打ち返せないし、長期戦になれば持久力も必須。だから、朝のランニングは欠かせなかったんだ。短距離の練習項目にもあるけど、スタートダッシュはテニスの練習項目にも入ってるよ。むしろ、基本中の基本。ちょっと体勢が変わるだけでやってることはあまり変わらないんじゃないかな? ……短距離走はひたすらゴールを目指して走るわけだけど、テニスは戦略で頭使うし、試合中はずっと駆け引き状態。正直、テニスしたあとにこの学校の勉強量をこなす自信はないよ」
 蒼樹はこんなふうにもったいぶらずに話してくれる人間だった。どんな練習をしてそれらを習得してきたのか、惜しみなく話してくれるやつ。
 出し惜しみとか、そういうの一切ないんだよね。 勉強にしても何にしても。
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