光のもとでⅠ
 俺は何も知らなかった。翠葉がどれだけつらい思いをして今まで生きてきたのか。
 仲は良かったしかわいがってもきた。でも、今日まで俺は翠葉の病状なんて聞いたことがなかった。
「大丈夫なの?」と母さんたちに訊けば、「無理をしなければね」と言われてきた。
 ――無理をしなければ。
 そこにかかってくる制約の多さなんて知りもしなかった。
 もっと前に訊いていればよかった。そしたら、今日こんなことにはならなかったかもしれない。俺がもっと早くに帰っていたら――。
「蒼樹、自分が側にいたら、とか考えるなよ。それは父さんたちだって同じなんだ」
 気づけば涙が止まらなくなっていた。
 俺、無理だ……。翠葉がこの世からいなくなることなんて考えられない。きっとそんなことになったら半狂乱になる。
 それくらい大切な妹……。
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