光のもとでⅠ
 水曜日、次の講義まで時間が空いたので、秋斗先輩のもとへと向かった。
 さて、なんと話したらいいものか……。
 翠葉は自分の持病を人に知られることを極端に嫌う。直接つながりがある人ではないし、今後、秋斗先輩に出逢う確率も低いだろう。だからといって、本人の意に反することをしていいものか――。
 あの日、秋斗先輩が送ってくれなかったら、俺が病院に着いたのは早くても二十分か三十分後だっただろう。それを考えれば、感謝してもしきれないほどだ……。
 まだ病状が安定したわけではない。それに、自分だって、翠葉の病状を聞いてすべてを消化できたわけでもなかった。
 正直、自分が消化しきれていないことを人に話すのは苦手だ。
 申し訳ないけど、お礼だけに留めさせてもらおう。
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