光のもとでⅠ
「……君の友達っていう人が教えてくれたんだけど、付き合ってる男は俺だけじゃないでしょ? そもそも、付き合ってるって言っても俺は君にキスすらしてないよ。いわば友達の延長っていうか、知り合いの延長に過ぎないでしょ? 現に、君は俺のことをよく知らないし、俺は君の考えていることが理解できない。それと……俺は、君の親がやっている会社に目が眩むような人間でもない。就職難の今、そういったプロフィールに惹かれる人間はいると思う。でも、自分の力で築いたわけでもないものを使って人を釣る行為は自分を下げるよ」
 そこまで言うと、彼女はテーブル上にあったコップを手に取り、勢いよく俺にかけた。
 ある程度は想定済み。コーヒーカップが自分の手にあって良かったとすら思う。
「あんた最低っ」
 吐き捨てると、彼女は走り去った。
「……あーぁ、ギャラリー満載」
 秋斗先輩の言葉に苦笑を返す。
 お昼時ということもあり、カフェにはそれなりに人がいる。にも関わらず、その場が水を打ったようにしんとしていた。
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