光のもとでⅠ
「セリは人の気持ちにすごく敏感な子だった。いつも人の先回りをして物事を考えるような、そんな子だった。だから、セリが気づかないわけがないんだ」
 私の中にあるお姉さんのイメージは、儚い人だった。
 笑っているのにどこか寂しげで、悲しそうな……そんなイメージしか残っていなかった。
「唯兄はどうしておね――セリカさんに会いに行ってあげなかったの?」
 それが知りたかった。
 お姉さんはあんなにも会いたがっていたのに……。
「それはまだ言えない」
 それを聞いてからオルゴールを返したかった。
「どうしても、だめ?」
「……珍しく食い下がるね? ――でもダメ。まだ言えない」
 一番聞きたいことだったけど、言えないというのなら仕方ない……。
 私はこのオルゴールを返さなくてはいけない。
 でも、怖い――。
「唯兄――もし、もしオルゴールが見つかったらどうする?」
「それこそあり得ない。あれだけ探してなかったんだ……。俺、事故現場を何度も探したくらいのマニアだよ? 一度、秋斗さんが手を回してくれて、警備員十人使って根こそぎ調べたこともある。それでも見つからなかったんだ。今さら見つかるわけがない」
 でも、そのオルゴールは今この部屋にあるの……。
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