光のもとでⅠ
「色」が、ある――。
 自然と手に力が入り、その手の脇に黒い色のケースが見えた。
 それを目にして、今、ここにハープを弾きに来たことを思い出す。それは、今日、手にしたばかりのローズウッドのハープ。
 入院してからハープなんて弾いてない。指が動くかはわからないけど、これ以外のもので自分の気持ちを伝える術を知らない。
「あの……私の……『ありがとう』を受け取ってもらえますか?」
 手の甲で涙を拭きふたりに訊く。
 楓先生と水島さんは顔を見合わせてから、私が手にかけた黒いのケースに視線を移し笑みを深めた。
「もっちろん! 私、ハープの生演奏なんて聞くの初めてよっ?」
 水島さんは少し興奮気味に答え、芝生に腰を下ろす。
「翠葉ちゃんも芝生のほうが楽でしょう?」
「あ、はい……」
 楓先生が芝生に移動する補助をしてくれた。
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