光のもとでⅠ
 オルゴールの重みはなくなったはずなのに、私の手はまだ自由にならない。
 封も何もされていない手提げ袋は少しだけ開いていて、中に何が入っているのかは容易に見ることができる。
 それを目にして驚愕した唯兄は、手提げ袋の口をぐしゃりと掴んだ。
 どうしたらいいのかわからない、そんな表情で顔を背け壁を見る。
 切れるんじゃないか、と思うほどの強さで唇を噛みしめていた。
「唯兄、血が……」
 唯兄に手を伸ばしたそのとき、思い切り手を振り払われた。
「痛っ……」
 加減をされていない力――男の人の力だった。
 途端に身体が震え出す。
 だめ――翠葉、しっかりして……。
 今、わけがわからなくて混乱しているのは唯兄だ。
 私がしっかりしなくちゃ……。
「どうしてこれをあんたが持ってるんだよっ」
 怒声。そう言ってもおかしくない声だった。
「あの……お姉さんが――看護婦さんから……」 
 言いたいことをまとめることができなかった。
「あぁ……別にいい。理由なんて聞いたところで何が変わるでもないし。俺、帰るわ」
 唯兄はそう言ってすぐに立ち上がった。
 だめっ――。
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