光のもとでⅠ
「なんかやな仕事。これだけあると黙々と『作業』するしかないじゃないね……。ふたりとも知ってる? 普通こういうのって、こっちが落とし主を探すんじゃなくて、落としたと思った人が遺失物届けを出して、双方成立って話よ? 何がどうして差出人を探して私が返却の経路を確保しなくちゃなんないのよ……。笹野くんの話しからすると、彼の在学中は間違いなく毎年あるのよね?」
 と、ダンボールに入れられたチョコに目をやる。
「心中お察しします」
 言ったのはゆんゆん。
「ここにいる限り、あとニ年は諦めてください」
 これは俺の台詞。
「ねぇ、君たち暇?」
 麗しい加藤さんがにこりと微笑む。
「……加藤さん、俺らを使おうとしてますよね?」
 ゆんゆんがじりじりと後ずさりを始めると、まだカウンターに置いてあった手を掴まれた。
「もっちろん! だって、今、一番私の心中を察してくれてるでしょう?」
 と、きれいな笑顔を見せる。
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