光のもとでⅠ
「嫌なら嫌で、あとは私たちが引き受けるわ」
 そうだった……。
 私の後ろには湊先生と蒼兄、それから蔵元さんまで控えているのだ。
 すべてを私が背負う必要はないと言われた。でも、唯兄ことをほかの誰にも任せたくなかった……。
「会います……。唯兄は謝りたいって言ってるんですよね?」
「えぇ……先に言っておくけど、まだいつもの若槻ってわけじゃないわよ?」
 眉間にしわを寄せる表情は司先輩とそっくりだ。
 その表情を見て落ち着きを取り戻した私は、
「謝りたいということは私が許すも許さないも私の自由ですから……。先生、唯兄を連れてきてください」
「……翠葉?」
「……なんでしょう」
「……何企んでるのよ」
「企んでるなんて人聞きの悪い……。ただ許さないだけです」
 湊先生が部屋を出ていってから部屋の照明を点けると、すぐに唯兄がやってきた。
「……まだ痛い?」
「痛いです」
「そっか……突き飛ばして悪かった」
「許しません」
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