光のもとでⅠ
「それならシフォンケーキはやめて、フロランタンとコーヒークランブルケーキだけにします」
「かしこまりました。ではクッキー生地とタルト生地を作ったあとの焼成時間ですが、コーヒークランブルケーキのほうが三十分と時間が短いので、こちらを先に作りましょう。それが焼きあがったところにフロランタンのクッキー生地を焼き、焼き時間でアーモンド生地を作りましょう」
「はい」
「お嬢様、このあとのご予定は?」
「あの……クッキー生地を作ろうか、駅まで毛糸を買いに行こうか悩んでいて……」
 明日買い物に行くくらいなら、今日行ってしまったほうがいいのではないか、と思い始めていた。
「それでは、お車をご用意いたしましょうか?」
「えっ、そんな申し訳ないですっ」
「そのようなことはございません」
「あの、一度ゲストルームに帰って家族に訊いてみます。もし連れて行ってもらえるようなら家族にお願いしてみます」
「さようですか。……もし、ご家族のご都合つかないようでしたら、遠慮なさらずにお声かけくださいね」
「ありがとうございます」
 私は七倉さんに頭を下げてエレベーターに乗った。
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