光のもとでⅠ
「九時頃だったら大丈夫ですか?」
「ちょうどいい時間帯です。最初の焼成を二十分、その間にアーモンド生地を作って、最後に百八十度のオーブンで二十分から三十分焼けばできあがりです。焼いている時間はコーヒークランブルケーキの切り分けやラッピング時間に当てましょう」
「……本当に何から何まですみません」
「いえ、もともとお菓子を作るのは好きですから、楽しませていただいております」
 にこりと笑うと、香乃子ちゃんの目元と少し似ていた。
 気づけば六時前で、唯兄から催促の電話が入る。
 即ち、夕飯の時間だから帰ってらっしゃい、というもの。
「七倉さん、今日はありがとうございました。また明日、よろしくお願いいたします」
「はい。では、明日、九時にお待ちしております」
 私はお辞儀をしてから九階のゲストルームへ戻った。
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