光のもとでⅠ
 家にはすでにお父さんもお母さんも揃っていて、私より少し遅れて蒼兄が帰ってきた。
「翠葉、今日は藤倉の駅ビルまで行ったんだって?」
 お父さんに訊かれ、引きつり笑いで頷く。
 唯兄には付き合ってもらってしまったからその理由は知られているけれど、お父さんと蒼兄にはまだ黙っておきたい。
 明日は午前中にお菓子を作り終えるから、そしたら自室に篭って無我夢中で編み物をすることになるだろう。
 部屋に篭っていることを不振に思われないといいのだけど……。
 私は夕飯を食べ終えると少し休んでからお風呂に入り、お風呂から上がるとすぐに編み物を始めた。
 太い編み棒と太い毛糸で目を作っていく。細い毛糸じゃないから、目も少なくて済む。メリヤス編みとガーター編みを悩み、一番短時間で編めて単調な作業になるガーター編み一辺倒で編むことにした。
 この時点で時刻は八時前。
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