光のもとでⅠ
「今日中に一本は編みきろう……」
 最初に手に取ったのは黒い毛糸に白いモヘヤが絡められた毛糸。
 唯兄と同じ毛糸だけど、今日はツカサのために編む。
 今日中に編み上げられるという余裕があるだけに、想いをこめて編むことができそう。
 一目一目想いをこめて、喜んでくれる姿を想像するのは難しいから、ただ無言でマフラーを首に巻いてくれるところを想像して――。
 使ってもらえたら嬉しい……。
 でも、ツカサの私服姿はあまり見たことがなくて、どんなマフラーが似合うのかがわからなかった。パレスで借りたマフラーは、ダーク系の配色で素材はカシミヤだった。
「そもそも、手編みのマフラーなんてしてくれるのかな……」
 不安には思うけど、手だけは休めずひたすら編み続けた。
 十二時前には五玉全部編み終え、ロングマフラーといった長さのマフラーが出来上がる。
「目を落としたところも編み間違えたところもなし……」
 あとはラッピングなのだけど、ツカサ相手にピンクの包みやリボン、というのがどうしても想像できなくて、モノトーンの手提げ袋にたたんだマフラーを入れるだけにした。
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