光のもとでⅠ
「コンシェルジュの七倉さんと一緒に作ったので、お味の保証はされていると思います」
 少しおどけて話すと、静さんはクスクスと笑った。
「わざわざこれを渡すために来たのかい?」
「はい……。お仕事の邪魔かなとは思ったんですけど……」
「いや、嬉しいよ。ありがとう。ではホワイトデーには何かお返しをしなくてはいけないね」
 言われて嫌な予感がした。
「あのっ、高価なものは困ってしまうので、同じようにお菓子がいいですっ」
「これはまいった、釘を刺されたな……。じゃぁ、須藤に何かお菓子を作らせることにしよう」
「本当ですかっ?」
「あぁ、約束する」
 静さんとの面会は以上。
 大きなドアを出ると、エレベーターの前で澤村さんが待っていてくれた。
 一緒にエレベーターに乗り、唯兄の部屋にたどり着いたときには七時半を回っていた。
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