光のもとでⅠ
「そういうものなの?」
「……だと思いたい……いや、信じてる」
「でも、もう渡しちゃったし……あとの祭りだよね?」
「来年こそはきちんとバレンタインに挑みなよっ?」
「……善処します」

 帰宅したのは八時だった。家族が揃っているなら玄関に並ぶ靴も多い。けれども、その中にひとつ見慣れない靴があった。
 手洗いうがいを済ませ、ルームウェアに着替えてリビングへ行くと、
「ただいま」
 リビングにはにこりと笑った秋斗さんがいた。
 私はすぐに反応できなくて、秋斗さんをじっと見つめてしまう。
「あれ? フリーズ?」
 ソファから立ち上がった秋斗さんに目の前で手を振られる。
「あ、わ……おかえりなさいっ」
「うん、ただいま」
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