♥♥♥危険なアフタースクール〜♥♥♥

0、才女とイケメン



「あのぅ、それで? 勉強はしないんですか?」



ここへ来てから、すみれは随分我慢していた。

ーーー我慢も限界よ! 話と全然違うじゃない!
とうとう、頭にきていた。


とんでもなく広いお屋敷…外国の洋館風の建物。美術館か博物館みたいな雰囲気に圧倒される暇もなく建物に入ってすぐに、シアタールームになる部屋に連れてこられていた。

部屋の真ん中に置いてある高級そうな長い革張りのソファ。

それに座らせられて、すみれは雷馬(らいま)と巨大スクリーンに向かって並び、もう長い事、狼男のDVDを見せられていた。


ーーー私、一体何しに連れてこられたんだろ?


すみれは、隣に座る雷馬を見た。

まるで西洋人の貴族のような雰囲気だ。
彫りの深い顔立ちをしている雷馬。
長い足を優雅に組み替えて高価そうなカップに入った紅茶を静かに飲む姿は、さながら絵画から抜け出した天使だ。

その絵画にタイトルをつけるとすれば『静かなる夢』とかそんな風になるだろう。


入学式から雷馬は周りの一般人とは、格が違う雰囲気をまとっていた。

ウェーブがかかった薄茶色の柔らかそうな髪、ハーフみたいに彫りの深い顔立ち、八頭身のモデル体型。

ある意味、この世の人間ではないように綺麗な人を見て、入学式に参加した生徒の誰もが、いや先生も親も、雷馬に見とれずにはいられなかった。


雷馬は、類い稀なその容姿のせいで、学校内でアッという間に有名人になっていった。

同じ高校に入学したすみれも、雷馬の存在は入学式の日から当然知っていた。

ーーー世の中には、随分綺麗な人がいるものね〜。
感心して、廊下を歩いていく雷馬を見たものだ。

だが、お互いに住む世界が全く違うという感じだったし、更にクラスが違うこともあり、雷馬とは今日まで1度も話した事はおろか、挨拶さえかわしたことも無かったのだ。


それなのに……
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