生まれた愛
沈黙の時間
俺は結衣に抱かれたまま
俺は抱き返すことはしていない
「今、あたしに何しようとしたの?」
耳元から囁かれる
どういうわけか言い訳の一つも出て来ない
「あたしとちゅーしてどうなるの?
千尋はどうすんの!?」
少し怒鳴るように結衣が言う
もう、俺、終わったな……
「……ごめん」
一瞬の気の迷いだった
俺は千尋にフラれたから結衣に甘えて
結衣が俺を好きだと言っていたから
“何でもいい”なんてふざけた考えになるんだ
俺は一言謝るだけだった
それでも離れようとしない結衣
どうせならまたさっきみたいにビンタをしてほしいくらいだった
なのになんで離れないんだ?
俺は無理矢理結衣を離そうとする
それでも結衣は離れようとせずに
俺の肩に顎を乗せたままだ
「………結衣…?」
「………なんだよ…」
結衣は泣いていた