生まれた愛
空がこんなに優しくしてくれるのは本当に嬉しい
けど、そういう問題じゃない
「別にあたしが嫉妬してるとかそういうのじゃないんだけどさ
“逃げた翔”よりもよっぽど男らしくない?」
「勝手なこと言わないで!!」
私は怒鳴るように結衣に訴えた
さすがの結衣も少し怖気付く
「翔は……逃げたんじゃないよ」
何も知らない結衣は悪くないと思ってる
……けど
それだけは違う
「ごめん、そういや、何があったかわかんないからさ」
「……色々あったけど
翔が守りたいものの優先が私じゃなかっただけ」
「……何があったかわかんないけど
千尋はそれでいいんだよね?」
「うん」
私が二つ返事で答える
すると結衣はまた自然な顔に戻り
「じゃああたし、空から身を引かなくていいんだよね?
千尋から空を奪っちゃうかも知れないよ?」
素直にいいよとは言えない自分が居た
でも
自分に嘘をついてまで私は
「うん」
空を捨てた